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あんただって、何もしなくていいから話を聞かせてくれなんて、変わった男だと最初は思いましたが、こっちは楽だから構いやしません。
お名刺なんて……ああ、なんだか懐かしいものを。
昔の話になりますが、こういうものを持って、やれ挨拶だから、やれ会合だからと出向いていた時代がありました。
どこへやったかしら、もう捨てちまったかもしれません。
いいえ、自分じゃそんなもの作れやしません。作りませんよ。
パソコンやプリンタはいじくっていても、肝心な、けれど面倒なことからは逃げ回っていたおかげで、どうやるかもわからないんです。
買い物したり、ゴシップ見るのに夢中でした。
肝心なことは、なにひとつしていません。
言い返せず、びくびくと怯えている者たちに、全部やらせていたんです。
がらんどうな脳みそを見透かされたくなくて、見て覚えたなんて嘘もついて。
だって、しょうがないでしょう。知らないんですから。
教えようとしない奴が悪いんです、どうせ聞かないとか、諦めるなんて失礼でしょう?
教わっていないせいで、知らないし、教えようがないんです。
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