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訊かれたって、答えようがありません。
嘘をついて、逃げて、出来上がったものだけをうまく持って行って、お偉いさんの前で悪びれもせず、私が作ったことにしてしていたんですよぉ。
いつからって……ガキの頃から、わたくしはたいそうな嘘つきでしたよ。
口先でごまかして、弱い立場にいる者に濡れ衣を着せてばかり。
いつでもどこでも、まわりに背負わせて、のうのうと生きてきたんですから。
家族にも同じように、平気な顔で嘘をついてきました。あとで取り返しがつかなくなるとか、そんなことも想像もしないで。
いえ、したくなかったんでしょうねえ。
ああ憎らしい……また生えてきた。失せろ、消えろ、ああ煩わしい。
だから押し入れってのは嫌いなんですよう、あんなじめっとした、根暗な奴の周りにたちこめる空気みたいなところ、誰が好きこのんで入るもんですか。
あいつにそっくりで、虫唾が走るったら。
嘘だって、なんだって、黙って閉じこもってくれれば……。
客なんか取りたくないんですよ、こんな商売、好きでやってるもんですか。
かすめ取るのが専門で、今まで生きてきたんですから。
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