第12話 竜宮城の玉手箱、北九州へ

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第12話 竜宮城の玉手箱、北九州へ

 和中5年8月3日。何でも作戦前日らしい。  防府を離れた俺たちは、陸上自衛軍の山口駐屯地に移った。  今、日本中が電力不足で供給制限下だ。  どうやって回線をつないだか分からないけど、何台かのネット画面が見える。  広島基地、防府基地、下関基地、と山口駐屯地の4か所で会議が始まっていた。  俺たちがいる山口駐屯地、椅子に座る将兵たちはどこか落ち着かないようだ。  特別な会議に召集されたんだ。下っ端の俺は空気が読めず、期待でワクワクしていた。  一方で、ナガトとホウセンは、他の軍人たちと同じく顔色が悪い。  軽くため息を漏らしたナガトは、俺の耳元でささやく。 「イツキ、あなたのハイテンションがおかしいのよ。私の父を信頼してくれるのはうれしいけど、ここは安心できる場所じゃないわよ」 「ようやく役に立てるような気がしてさ。うれしくて、つい」 「逃げてばかりの私たちが役に立てるのかしら」 「役に立って、昇進しようぜ」 「殉職して、特進しないといいわね」  ある程度の話を事前に聞いていた、班長のナガトは顔色が悪い。  意味のわかっていない俺は、軍で役に立ちたいという気持ちが逸っていた。ビビりのホウセンは無言で、両手を合わせてそわそわしている。  陸軍大将として、今回の作戦を指揮する叔父さんが、壇上と画面に現れた。
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