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本気でパニックになっていた俺は、何かを思い出そうとしたこともあり、キールの言い分をギリギリのところで受け入れることが出来た。
「あー、直感だよ。食い物がなければ、俺があげようと思っていたさ」
「命を救えないかどうかは、キールさん、貴方にもわからないのですか?」
「キールでいい。半端な敬語もやめろ。この様なら、予備役も軍人だ」
「えぇと」
「イツキ、何度も言わせるな。食いものがあるなら今すぐ食え。俺は今、目の前にいるお前の命を救いたい」
湿気たクッキー2枚を味わい食う。甘すぎて咽る。のども乾いていたことに気づく。
キールは得体の知れない飲み物を軍用の銀ボトルで寄越した。
少しだけ飲んだら、ただの水だった。
水道水は最強。
消毒や飲食、洗い流すことなど、幅広く使えて便利と彼は言った。
なんだ。未来でも、軍人は今と同じ技能や知識を使っているのか。
部下に腹を空かせない上官としては、キールは優秀かもしれない。
今の俺は部下というより、救護される一般人に近いかもしれないけど。
極限になっていた俺は、最初の命の危機を脱出して、少しまともな思考に戻った。
素早く敵を倒した後、足を止める。
次の行動に移ったキールは、頭の中で何かを計算し出した。
そわそわと灰色の空を眺めている。
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