小さい女神に何を願うか

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               1  僕はいま、文字通り頭を抱えている。  理由は僕の目の前に”願い事を叶えてくれる女神”なるものが現れたからだ。 女神は 「さあ、あなたの願い事を言って下さい」  と神々(こうごう)しく両手を広げてそんなことを言っている。  これは夢でもなければ、僕の頭がおかしくなって幻覚が見えているというわけでもない。確実に現実だ。しかし、いったいどうしろというのか? 自慢じゃないが僕は頭が悪い。どうしたらいいかと悩むことは多いが、その答えが出ることはほとんどない。  もうかなり落ち着いたと思うのだけど、いま一度、自分を落ち着ける為に今日1日あったことを思い出して整理してみよう。正直、あまり思い出したくない1日だが、だいたい毎日こんな感じだ。  高校2年生の16歳というのはまさに青春時代の真っ只中だ。しかし青春時代イコール楽しい時代、というわけではない。みんな青春時代特有の様々な悩みを抱えて生きている時期でもある。僕にもやはり悩みがある。ありがちな悩みで、それでいて解決が難しい悩みだ。  毎朝僕は早く起きる。そしてまず台所のテーブルの上に置いてある母が用意してくれた朝食とお金をチェックするのだが、この時から既にその悩みの一端は始まっている。朝一から『今日は”合格か不合格か”』みたいな気持ちで心臓が高鳴ることになる。良かった。今日は”合格”という気持ちだ。1000円札が置かれていたのだ。ここのところは1000円の日が続いているので助かる。  ホステスをしている母は昼夜逆転の生活をしているのでまだ自室で寝ている。洗濯機のタイマー機能で洗濯が終わっている衣類をベランダに干すのが僕の毎朝の仕事だ。温めた朝食を食べ終えて登校の準備をすると足が重くなり、住処の公営住宅の1階のドアから出ると身体が重くなった。一度深呼吸をしてから駅を目指して歩いた。  電車に乗ると他校の生徒たちと出会う。爽やかな雰囲気なのだが、おそらく僕だけは暗い顔つきだと思う。下車する駅が近づいてくるほど暗澹たる気持ちになる。
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