12人が本棚に入れています
本棚に追加
などと言って盛り上がっている。
僕は先生と同じように深いため息を鼻でついた。
こんな高校だが、意外にも学校内は荒れていない。よくアニメや漫画に出てくる不良高校というのは、窓ガラスは割られ、備品は壊され、壁は落書きだらけ、なんていうことが多い。でもうちの高校は整然と保たれている。たまに僕のクラスの窓ガラスが割れることがあるが、それ以外はちょっと掃除が行き届いていない程度だ。しかし、これには彼らなりの”策略”がある。
授業中も意外に静かだ。時々小さな笑い声が聞こえる程度だ。でも真面目に授業に参加しているわけではない。スマホをいじる者、ラインで会話する者、寝ている者、漫画を読んでいる者等々……。リューイチとキョーイチは片手にハンドグリップを持って握力を鍛えながらスマホをいじっている。とにかく勉強などしていないのだ。
国語の授業で漫画を読んでいるやつが教科書を読むように先生に当てられても、「頭が悪いんで漫画以外読めませーん」。
数学の授業で寝ていたやつが起こされて問題を答えるように先生に当てられても、「寝ぼけているんでわかりませーん」。
物理の授業でラインをしているやつが当てられても、「いま”会話中”なんで他の人にしてくださーい」。
こんな調子だ。英語の授業でリューイチに英文を読むように当てた女性の先生は
「俺は日本人だ。英語なんか話す必要はない。てか、俺に当てるな! 今度当てたらぶっ飛ばすぞ!」
と怒鳴られて「ひっ!」と肩をビクつかせていた。しかし、確かにリューイチに当てるのはどうかと思う。そんな結果になるのはわかりきっているだろう。
午前中の授業が終わって昼休みになると僕は”避難地区”へと向かった。校舎裏だ。日当たりはほとんどなくて、校舎の壁の下の方にはコケが生えている。人はほとんどやってこない。冬は寒い場所だが最近になってちょうどいいくらいの気温を感じるようになった。
友達料を払っていじめを受けないとはいえ、やはり何をされるかわからない。だから避難するのだ。それに校内に僕の居場所などない。
今年は空梅雨になると天気予報では伝えているが、その予報が当たってほしい。水不足などの弊害はあるだろうが、傘を広げてこの場所に避難するのは本当にみじめな気持ちになるのだ。
そんなことを考えていると、重雄がやってきた。彼も避難して来たのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!