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「やるか? いいぞ。1対1か? それとも4人まとめてか?」
カバ子は右手で大きな握りこぶしを作ると、大きな左の手の平をパンパンと強く叩き始めた。その威圧に4人ともさらにたじろぐ。
「てめぇ……覚えておけよ。やってやるからな」
アカはそんな捨て台詞を残して他の3人と去って行く。
「おう、いつでも来い。待ってるぞ」
そう言ってカバ子は4人の後姿に中指を立てた。
林さんは地面に落ちた原稿を丁寧に拾っている。カバ子もそれを手伝う。
「ありがとうございます……」
林さんは小さな声でだがしっかりとそうお礼を言った。
「どういたしまして」
とカバ子は拾った原稿を林さんに渡した。
「私、2年生の林亜由美と言います」
林さんはそう言って丁寧に頭を下げた。
「私は3年の木村奈々。みんな『カバ子』っていうけどな」
と笑う。
木村奈々というのか。正直、顔と名前があまり合っていないな。
カバ子こと木村奈々は、原稿を見て、
「ぐしゃぐしゃになったけど、破れてはないな。まだ大丈夫だろ」
と笑顔で言った。
「はい。本当にありがとうございました」
林さんは深々と頭を下げた。
「いいんだよ。私は弱い者いじめが大嫌いなんだ。それと――」
と、なんと覗き見している僕らの方に目を向けて、
「いじめを陰からコソコソ覗いてるような連中もね!」
と怒鳴った。
「気づいてないと思ったか! 出て来い!」
僕も重雄も飛び出した。
「藤崎君、岬君……」
林さんはそう呟いた。
「気づいてなかったのか? ずっと見ていたんだぞこいつら」
そう言ってカバ子は僕らに”蔑視線”を向ける。
「どっちが藤崎でどっちが岬だ?」
カバ子はその目のまま訊いてきた。
「僕が藤崎で、こっちが岬です……」
僕が小声でそう答えた。
「まったく。男ふたりもいて、いじめられてる女の子ひとり助けられないのかよ」
返す言葉がない……
「いつも私のスカートをめくらされている2人だな?」
腕組みをして大きな顔を突き出してくる。「はい……」と僕らは縮こまって返事をした。カバ子は大きなため息をつく。
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