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「私はさ、短気だからどうしてもぶっ叩いてしまうけど、それは単にスカートをめくられたことだけに怒っているんじゃない。あんたらがいじめてるやつらに全然抵抗せずに、ただただ言いなりになってることにも怒りを感じるんだよ」
僕と重雄は手を後ろで組んでうなだれて聞いている。
「スカートめくりをやらせた連中を追いかけるけど、すぐ逃げやがる」
確かに、カバ子はいつも追いかけているけど相手を捕まえられない。それは相手が速いのではなく、カバ子がとんでもない鈍足だからだ。僕よりも遅い。
「もう少ししっかりしろよな」
険しい顔でごもっともな説教をしてくれる。
そこでカバ子は優しい顔を林さんに向けて、
「ひょっとして漫画家目指しているのか?」
と穏やかに林さんに聞いた。
「はい」
林さんはちょっと慌てたようにうなずいた。
カバ子はうんうんとうなずき「夢があるのはいいこった」と笑顔になった。
「私、勉強は苦手だけど、漫画を描くのは少し得意なんです」
「私も頭悪いよ。こんな高校に来てるくらいなんだから」
と笑う。
「いじめられているんだったらそういう大切な物は学校に持ってこない方がいいぞ」
と林さんに忠告した。
「はい。そうですね」
林さんはうなずく。
「じゃ、私は昼寝に戻るから」
と手を振って非常階段を上がろうとする。
「え? 昼寝ですか?」
林さんが驚いたように訊く。
「ああ。ここは静かだから、非常階段の2階の踊り場で昼寝しているんだよ」
と言って階段を上って行った。
その場に僕ら3人が残された。なんともいたたまれない気持ちになり、僕と重雄は無言でそそくさとその場を立ち去った。
立ち去っている最中に重雄が
「なあ。林さんがどうしてアカ軍団によくいじめられているかわかるか?」
と訊いてきた。
「え? そりゃあ大人しいからだろ?」
「それもあるよ。でも可愛いからだよ」
「え?」
僕は驚いた。
「言いたくないけどアカも可愛いだろ? でも林さんの方がもっと可愛いんだ」
「そうか?」
僕は首を傾げた。僕も言いたくないけどアカはかなりの美少女だと思う。
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