小さい女神に何を願うか

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「普段は地味だからあまりわからないけど、よく見てみたら林さんも可愛いよ。眼鏡を外したらよくわかる。男連中はみんな言ってるぞ。『アカも可愛いけど、よく見たら林の方が可愛いよな』って」  そうだったのか。僕はそういうことに疎いから気がつかなかった。 「つまり妬みでいじめられているんだよ。林さんがいなければ自分がこのクラスで、いや、この学校で一番可愛いのにって。だから『学校に来るな』とか言われていたんだ」  なんともまあ……アカらしいと言えばアカらしいけど。  そのまま午後をやり過ごした。重雄は午後もやはりいじめられていて、放課後になってほっとしていた。  帰り際に、キョーリューの2人からスマホを返してもらう。その際、重雄は2人からスマホ画面に「ペッ」と唾をかけられていたが……  校門を出るとスマホの電源を入れながら急いで帰途につく。誰からも連絡はなかった。  家に帰って玄関を開けると、ちょうど母が起きたところらしく、寝巻き姿で自室から出てきてボサボサの髪を掻きながら 「お帰り」  と寝ぼけた声で言ってきた。 「ただいま」  とだけ言うと、僕は自分の部屋に入った。そこで部屋着に着替えるとほっと息をついてベッドに座り、少し休んでからテレビと勉強机の上にあるノートパソコンを点けた。録画しているアニメや配信アニメを観て現実逃避をすることで学校で疲労困憊して澱んだ心を浄化する為だ。もちろん録画だけじゃなくてリアルタイムでも観る。僕は深夜アニメも土日の午前中にやっているアニメも、ゴールデンタイムにやってるアニメも全て観ている。腐女子向けアニメやショートアニメ、小さな子供向けのアニメまでしっかり観ている。映画アニメも当然観る。僕の自由時間はアニメで消費されるのだ。我ながら立派なアニメオタクだな、と思う。
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