小さい女神に何を願うか

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 目的の駅で降りると僕はまっすぐには学校に向かわない。しばらく線路沿いの緩い上り坂を歩く。けっこうな田舎で、田畑が広がっている。そして用水路に掛かっている小さな橋。ここに来ると大きなため息をつく。道路の脇から田畑に降りる為の小さな階段があって、毎朝ここを降りる度に僕のはマックスになる。 「信矢(のぶや)」  後ろから声を掛けられた。重雄(しげお)だった。その沈んだ表情を見て僕は察した。 「俺、今日は”500円の日”でもなくて母さんが弁当を作ってくれたんだ」  そう言ってため息をつく。やっぱりだ。 「そりゃまずいな……」  僕もうなだれながら階段を下る。 「いまいくらあるんだ?」  そう僕が訊くと、 「300円ちょっとしかない……」  と重雄はため息をついた。  ああ、それじゃあ全然だめだ。僕は1000円以外にも少しだけお金を持っているが、重雄より少ない。持ち金に余裕のある時は互いにし合ってなんとか1000円にすることもあるのだが。  階段を下り終わったそのすぐ右側は先ほどの用水路を渡す橋の真下で、短いトンネルになっている。人気はまったくないところだ。トンネルは僕の方から見て左3分の2くらいが田畑に水を通す為の用水路で右側に人が1人半通れるかという程の細い通路になっている。用水路と通路を隔てる頑丈な欄干があるのだが、その欄干にキョーリューの2人が背中からもたれかかって加熱式タバコでタバコを吸いながら喋っていた。僕らの姿に気がつくと二人とも用水路にタバコを投げ捨てて、 「やあ、おはよう。信矢くん、重雄くん」  とキョーイチがいつも通りのわざとらしい笑顔で挨拶してきた。 「おはよう……」  僕も重雄も消え入りそうな声で言ってうつむいた。そんな僕らに対して2人はニヤニヤ顔で近づいてきて 「はい、スマホを預かります」  とリューイチがこれまたいつものわざとらしい笑顔で言って手を出してきた。僕らは言われた通りスマホを渡した。この時、電源を切ることも忘れない。
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