小さい女神に何を願うか

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 机の上に座って化粧をしている女子や、机に足を乗せて漫画雑誌を見ている男子や、パンやお菓子を食べながら叫ぶような大声で会話している女子達なんていうのは”優等生”だ。大音量で音楽を流しながら机の上で踊っている者とそれを見ながらやんやとはやしたてる集団。タブレットでやはり大音量であえぎ声が流れているエロ動画を見てニヤニヤしている男女の集団。加熱式タバコでタバコを吸いながらカードゲームをしている集団。同じく加熱式タバコでタバコを吸いながら携帯オンラインゲームで対戦して騒いでいる集団。エイジとコーダは教室の後ろでサッカーをしている。こんな連中の集まりだ。   しかしなぜか学校をサボったりするやつはほとんどいない。むしろ早く登校して来るくらいだ。 「おーい、みんな聞けー」  リューイチは僕の肩を組んだままで教室の前に行くと教壇をバンバンと叩いた。その時だけはみんな一瞬静まる。キョーリューの2人はこのクラスを締めているのだ。クラスといっても1学年1クラスしかない。このクラスの生徒も30人。それくらいの不人気校だ。僕の高校はいわゆるFランク高校で世間からの評判も悪い。もちろん毎年定員割れである。頭の悪い僕はこの高校しか受からなかった。そしてこのクラスは間違いなくこの学校で最も素行の悪いクラスだ。 「今日は信矢はお友達だ。手ぇ出すなよ」  と言うと全員「うぇーす」「はあーい」とか気の抜けた返事をした。 「でも残念ながら重雄君は今日はお友達になれなかった。好きにしろ」  そうキョーイチが言うと、全員が「イェーイ!」「やった!」などとはしゃいだ。  2人の”言いつけ”が終わると皆また騒ぎ始めた。  僕は静かに自分の席に座った。 「おーい、重雄。的当てゲームやろうぜ」  教室の後ろにいたエイジが自分のスポーツバッグを持って重雄を呼ぶ。重雄は無表情でうつむいて言われた通りエイジとコーダのところに歩いて行く。 「俺達もやらせろ」  とキョーリューの二人も後ろに向かった。エイジがさきほどのバッグの中からバイクのヘルメットのような”面”を取り出した。格闘技のアマチュアの試合等で使用されるスーパーセーフ面だ。顔の部分が透明で頑丈なプラスチックで大きく盛り上がって覆われている。その真ん中には直径5cmくらいの黒マジックで丸く塗られたが描かれている。
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