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アカはそう言いながら林さんの左手首を持つと傷痕に触れた。4人ともクスクスと笑う。林さんには僕らのような友達料というものがないようで、暇があればいつもいじめられている。特にこのアカ軍団の4人に。
しばらくの間、林さんをそうやっていじめで囲っていたが、飽きたのか行ってしまった。
林さんは床に投げられた本を拾おうと中腰で本に手を伸ばしたが、そこに素早くアイラがやってきて、「おりゃ!」と本を蹴飛ばした。「あ……」と林さんが蹴飛ばされた本を中腰のまま追いかける。しかし、手が本に触れようとした瞬間、また今度はシオリが蹴飛ばした。さらにそれをモモミが蹴飛ばす。林さんはその度に本が飛ばされた方向に中腰で追いかける。それを見て4人はやはりクスクスと笑った。最後にアカが林さんより早く本を拾い上げると、「おらよ!」と林さんの机の方に投げた。本は机の上に乗り、そのまま滑って林さんの椅子の上に落ちた。
「アカ、凄いコントロール!」
アイラが感心する。
「アカに感謝しなよ、あんたのところに戻してあげたんだから」
とモモミが言って4人は笑う。
林さんが自分の机に戻って椅子の上の本を持ち上げたその時、「おい、先生が来たぞ」とコーダがキョーリュー達に言った。「おっと」と言いながら4人で小石を拾う。重雄はこれまた慣れた様子で面を取り、エイジに手渡した。いじめの痕跡は残したくないのだ。しかし、先生が教室に入って来てもクラス内の騒ぎ自体は収まらない。
先生が、
「おい、みんな席に着け! 静かにしろ!」
と大声で言うも、僕と重雄と林さん以外はみんな無視している。「おい!」と先生は手を大きく叩いて言うが、やはりみんな無視だ。先生がため息をついた時、
「おい、お前ら。席に着いて静かにしな」
とキョーイチが言うとみんなその指示には素直に従って各々の席に黙って着いた。これもいつものことで先生の言うことはまったく聞かないのにキョーリューの言うことはあっさりと聞くのだ。先生に屈辱を味合わせる為だ。でも先生ももう慣れてしまったかもしれない。先生は「出席を取ります」とため息混じりに言った。出席番号1番はアカだが……
「赤石朱里」と先生は呼ぶが、アカはスマホをいじって聞こえないふりをしている。
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