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「赤石」先生は言うが、アカは何事もないかのようにスマホをいじっている。「赤石、スマホをしまって返事をしなさい」これも当然無視だ。
先生は険しい顔つきでアカの元まで歩み寄る。先生がスマホを取ろうと手を伸ばした瞬間、アカは自分の胸に――かなりの巨乳だ――スマホを押し付けた。先生の手が反射的にアカの胸に伸びる格好になった。その時、
「きゃあ! 先生! 何するんですか! やめてください!」
とアカは胸を押さえて横を向いた。先生は戸惑ったように「何って……」と呟くが、その時、アイラがその様子をスマホ動画で撮影していることに気がつき、すぐに手を引っ込めた。しかし、その慌てた様子が逆にいかがわしいことをしようとしたかのような誤解を招く結果になっていた。
「先生。僕、去年みたいな騒ぎになるの嫌ですよ」とコーダが言った。「僕もです」「私も」などという声が教室のあちこちから発生した。先生は唇を固く結び、うなだれると深いため息をついてそのまま教壇に戻った。この高校では先生までいじめられているのだ。実際、不登校になっている先生が2人いる。僕はよく2人で済んでいるなと思う。
「行田竜一」とリューイチが呼ばれるがこちらも無視だ。
「行田」と先生はリューイチを呼ぶがリューイチは先生を睨み付けると
「いるよ。だいたい、毎日毎日点呼なんか取らなくても見たらわかるだろ? 目がないのかお前には?」
とドスの効いた声で答える。先生はまたため息をついた。
その後何人か呼ばれるが適当なやる気のない返事が返ってくる。まあ、返事をするだけマシだが。
「紀熊恭一」キョーイチが呼ばれる。キョーイチは無視はしなかったが、
「さっきリューイチも言ったけど、見えるでしょ? 本当に目がないの?」
と小ばかにするように言うと教室に笑いが起こった。先生は疲れたように点呼と通達事項を言うと肩を落として教室を出て行った。
そしてみんなまた騒ぎ始める。アカはアイラの元に向かって行って、「どう?」と訊いている。モモミとシオリもアイラの元へ行く。アイラは撮った動画を見せながら
「これじゃ微妙だね」
と首を傾げる。
「いっそその巨乳をしっかり触らせたら? その方がもう言い訳のしようがないし」
「やなこった」
とアカは笑う。
「セクハラに見える動画を作るのは難しいかな?」
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