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はるかさんの協力で首尾よくプレゼンも終わって、手伝ってもらったお礼にランチをご馳走したんだった。二人で食事したのはそれ一度きりだった。はるかさん、目がぱっちりとして可愛かったな。
次の年の人事異動で、はるかさんは転勤してしまったけど、その前に告白しいてればよかったな。今更悔やんでも仕方がないか、そう思いながら、ファイルを箱に戻そうとしたとき、ページの隙間から、何かがひらりと床に落ちた。拾い上げてみると写真だった。
それは、煌めく青い海をバックにした、ぼくとはるかさんのツーショット写真だった。
「座り込んで、何見てるの?」
背後から声がした。振り返るとはるかがいた。
「はるかに手伝ってもらったプレゼンの資料を見てたら、こんな写真が出てきたんだ」
ぼくははるかに写真を見せる。
「へえー、懐かしいね。それ、初めてのデートのときのだね」
「うん、ドライブで黒鹿海岸へ行ったときのだよ」
「海辺のカフェで食べたソフトクリーム美味しかったなあ」
はるかの思いは当時に返る。
「また、行ってみたいな」
「あっと、だめだめ。楽しい思い出に耽るのもいいけど、荷物が片付かないよ。さあ、体動かして」
はるかがぼくを追い立てた。
「ああ、分かった。今日中に片付けるよ。とりあえず寝場所を確保しなきゃな」
新居に持ってきた二人分の荷物は思いのほか多かった。はるかが言うように、思い出に耽ってなどいては今日中に片付かないだろう。
ぼくはプレゼンのファイルを箱に戻すと、部屋の隅に持って行った。直ぐに使うものではないので、後で片付ければよい。
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