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箱の蓋を開けた。絵本が出てきた。巨大なかぶらの絵が表紙に描かれている。
「おじいちゃん、その絵本読んで」
孫のまゆかが私の横に来て、ちょこんと座った。
「まゆか、おじいちゃんは忙しいのよ」
「まゆか、邪魔しちゃいけないよ」
さおり夫婦が訪ねてきたのだ。小学生の兄のタケルは、二人の間でおとなしく立っている。
「代わりにおばあちゃんが読んだげるね」
白髪が目立つようになったはるかが、絵本を手に持った。
「おとうさん、もう歳なんだから、あんまり無理しないでね」
さおりが心配そうな顔をする。
「分かってる。でも、今日中に片付けたいからな。もうひと頑張りで片付くんだよ。まあ、ぼちぼちやるよ」
さおりの気遣いはありがたかった。最近、手に力が入らないし腰も痛むので、箱を持ち上げるのに苦労していた。でも、箱の残りはあと僅かだった。どうにかやれそうだ。
ゆっくりとしたペースではあるものの箱は片付いていき、とうとう最後の一つになった。
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