𝐒𝐭𝐨𝐫𝐲1

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 僕の魔法は誰にも効かない。  僕の魔法が弱いからなのか――。  僕の魔力がないからなのか――。 「φλόγα《フロガ》!」  走ってくるウルフと僕の間に1人の少女が現れた。  彼女の魔法で走って来ていたウルフは声を上げて倒れた。 「なんで……」  不意に僕の口をついて出た言葉だった。  その言葉を捉えたかのように振り返った彼女は睨みつけてきた。 「フォス!いい加減にしてよ!死にたいの!?」  なんで僕がアンサスに怒鳴られなければならないのか――。 「なんで……追いかけてくるのさ……」  僕は彼女に向けて一言そう言い放った。  彼女に背を向けてあと少しの森を下る。  森を下り終わり村が見える。  ほんとに小さな村だ。  森に来た時と逆の道のりで家へと向かう。 「ねぇ!フォス!」  後ろからアンサスの声が聞こえる。  気にもとめずに歩き続ける。 「θεραπεία《ペトラ》」  後ろから聞こえる1つの言葉と共に歩いていた道に森から崩れ落ちてきた岩が現れる。  あと一歩前に進んでいれば怪我どころの話では無かっただろう。 「なにするの?」  振り返ってアンサスに問う。 「ふざけないで。そっくりそのままフォスに返すわ」 「θύελλα《シエラ》」  さっきまで歩いていた道と向き合い一言言い放つ。  暴風が吹き岩を砕く。  僕が使えるうち1つの魔法だ。  砕いた岩を通り抜け家路に着く。
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