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「こんな朝早くから私を呼び出すなんて珍しいわね。何か急用? もしかしてアイからメールでも来たのかしら?」
学校に着くと、俺は机に座っていた相賀を誘い、一緒に校庭にある鉄棒へと赴いた。鉄棒に来た理由はクラスから見えない位置にあることと背もたれに使えることだ。
「察しがいいな。お前がアイじゃないかって疑うレベルだ」
俺はポケットからスマホを取り出すと相賀に向けて今朝届いたアイからのメールを見せた。相賀は俺のスマホを凝視すると、「やっぱり……」とつぶやいた。
「やっぱり? まるで俺のところにアイからのメールが来ると予想していた言い草だな」
「まあね。あなたか小糸さんのどちらかには来るんじゃないかって思ってた」
「小糸? 相賀は今回の件で何かに気づいたのか?」
「確信に近いところまでは。それで、今の藍沢くんのメールを見て確信に至った」
さすがは成績優秀のクラスメイトだ。今までのヒントの中から犯人を炙り出したらしい。
「私にこれを見せたってことは、渡部くんへの被害を未然に防ぐための手伝いをしてほしいと言うことかしら?」
「相賀の言う通りだ。同級生に注意って書いている以上、クラスチャットに貼るわけにはいかない。けれども、協力してくれる仲間は一人くらいは欲しい。だから相賀に」
「別に構わないわ。犯人も目星がついたことだし。でも、なぜ私に? 私も一応同級生だから疑いはあると思うのだけど」
「この件を一番手伝ってくれそうで頼りになる友達なんて、相賀くらいしかいないからな」
「あなたには九頭くんがいるじゃない? 親友でしょ?」
「なんで九頭のことが出て来るんだよ。頼りにはならないだろ。いつもの様子を見ると」
「……まあ、そうね。分かったわ。その代わり、私は私の方針で動かせてもらうわ」
「それでいい。犯人の目星がついているのなら、今日から来週の月曜にかけて俺は渡部を、相賀は犯人を尾行してくれ」
「分かった。それと犯人だけど、捕まるまでは私だけの秘密にしておくわね?」
「教えてはくれないんだな」
「ええ。私は誰のことも信用していないからね。私の中での犯人が仮に違ったとして、真犯人があなただった場合に困るもの」
「それはないだろ。もしそうだったら、お前にこんなことを話さないよ。もっと単純なやつを狙う」
「どうかしら? 最初に頭のキレる人物を抑えることで自分の思惑を有利に進めることも考えられる。ここまでの行動があなたの自作自演でないという証拠は出せないでしょ?」
「……まあ、いいや。分かった。その代わり、ちゃんと追ってくれよ」
「ええ。尾行している間はチャットで会話しましょ」
話が決まったところで俺たちは朝のホームルームのチャイムが鳴る前に教室に戻った。
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