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彼はどう思っているのかしら?
フェリクスにジョフロワといっしょだったところを見られて以降、落ち着かない日々をすごしている。
フェリクスは、あいかわらず朝一番に剣の稽古をして朝食をすませ、それから領地内をまわっている。
わたしはわたしで、朝食をすませてから慈善病院に行ったり、領地内をまわったり援助者や援助者になりそうな人たちと会ったりしている。
フェリクスに直接尋ねることが出来ないでいる。
その勇気がない。たとえ勇気があったとしても、その機会はなかなか巡ってこない。
わざわざその機会を作る気力は、わたしにはない。
それでも、心のどこかで彼と話さなければならないとは思っている。
パトリスとピエールとは、なにかと接触を試みている。
青年将校たちは、気さくでやさしい。だから、わたしだけではなく、ラングラン侯爵家のみんなともうまくやっている。
それなのに、彼らはフェリクスに関することとなると口を閉ざしてしまう。頑なに話そうとしない。はぐらかし、逃げてしまう。
いくら軍人でフェリクスの部下とはいえ、そこまで意固地にフェリクスの話題を避けられると、こちらも面倒くさくなってしまう。
したがって、つぎなる策を実行に移すことにした。
執事のモルガンと管理人のマルスランなら、フェリクスからなにかきいているかもしれない。
そう期待してあたってみた。
が、彼らはなにもきいていなかった。
いいえ、違う。
すくなくとも、彼らはわたしが知りたいことは知らなかった。
それ以外のことは、いろいろ尋ねられて答えているようだけど。
わたしが知りたいこと、つまりジョフロワといっしょにいるのを見られた云々については、フェリクスはなにも話していないようである。
ふつうなら尋ねてもおかしくない。モルガンとマルスランなら、あるいはメイドのロマーヌとヴェロニクなら、ジョフロワとわたしの関係を知っていてもおかしくないと考える。
それとも、フェリクスは自分で宣言した通り、わたしが自分以外の男性と話をしようが抱き合っていようが関係ない、と思っているのかしら? やはり、そういうことにも興味がないということなのかしら。
それならば、わたしの数日間の葛藤はなんだったのかしら? ということになる。
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