月夜烏

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足早に部屋に入り扉を閉めると、扉によりかかったまま、ずるずると座り込んでしまった。 そして溜めていた息を吐き出す。本来ならすぐ今日の復習や明日の予習など勉強に取り掛からなければならないのだが、今日は思ったように体がいうことを聞いてくれない。頭ではそうしなければと思っているのだが、体は拒否しているかのように座ったままだった。 しばらくの間、ぼーっとしていると近くからかすかな機械の振動が床を伝ってきた。顔をあげて周りを見ると、部屋に上がる際にいっしょにもってきたスクールバッグの中らしかった。手を伸ばし掴むと自分の方に引き寄せ、中からスマートフォンを取り出した。開いてみると、メッセージアプリに一件の通知が入っていた。普段は親と公式からたまに来るぐらいなので、珍しいと思いつつ差出人を確かめる。かわいらしいシマエナガのイラストアイコンの横にユイと表示されている。そういえば交換したなとさっきの出来事を思い出す。トーク画面にいくと吹き出しから「よろしく!」とかわいらしい白いくまスタンプとともに送られてきていた。いかにもあのあの子らしいと思ったが返事に困ってしまった。 親とのやりとりでもめったにスタンプなんて送られてくることはないので、どう返したらいいかわからないのだ。何も返さないのはよくない。かといってこちらこそだけでは冷たすぎるし、スタンプなんて微妙なのしか持っていない。数分、白いくまとにらめっこして結局、最初からあった兎のキャラクターを送った。 そんなことをしていると、気持ちが落ち着いたのか、不思議と体が動き立ち上がることが出来た。冷静になって部屋を見渡せば、電気も付けていなかった。しかしカーテンの閉めていない窓から、わずかに光が差し込んでいたので気になって窓の外を除くと中途半端な月が雲の後ろに隠れもしないで、堂々と顔を出していた。公園で見た時とは大違いだなと思いつつ、カーテンを閉めた。
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