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ろくな抵抗も出来ずにあの虫だらけの場所へと連れ戻され、怜は石の床に再度転がされた。また抵抗されるのを防ぐためか、ポケットから取り出した紐で、痛みに呻く怜の両手首が纏めて縛られる。
「っ……親御さんが、帰って、きたら、言い逃れ、できないぞ……!」
「ああ、心配ないよ。あの人たちももう居ないから。居眠り運転で崖から車ごと落ちたんだって。睡眠薬って結構効くんだね」
「!? 親まで、殺したのか……!?」
「親だけだよ。麻咲は勝手に死んだんだから」
どこまでも冷たい声で、当然のように人を殺めた事実を告げる。麻寿は紐を何度も引っ張って外れないことを確認すると、今度は怜の下半身の方へ手を伸ばし、ベルトのバックルを外し出した。
「……何するつもりだ」
何を言っても麻寿の心を揺さぶることは出来ないと理解した怜は、せめて刺激しないように麻寿の行動を探ろうとする。
「怜が麻咲と──ぼくとしようとしてたことだよ」
「っ! やめろ!」
突然訪れた貞操の危機に、まだ自由な足をバタバタと動かすが、簡単に麻寿に押さえ込まれる。
「何で? 期待してたんでしょ? こっち側とは思わなかったかもしれないけど」
「お前じゃない!」
「──でもその気持ちを向けたのは、紛れもないぼくにだよ」
図星を突かれて言い返せなくなった怜の下半身から、ズボンと共に下着まで剥ぎ取られる。外気に突然晒された肌が、適温にも関わらず鳥肌を立てた。
「ちゃんと準備の手伝いもしてあげたでしょ?」
「……何のことだよ」
「お腹、苦しかったでしょ」
「ッ!」
寝起きにトイレに駆け込んだことは知らないはずの麻寿が、にたりと嫌悪感を覚える笑みを溢しながら怜の下腹部に人差し指を這わせる。段々と下っていくその指の感覚を追わないように、怜は目を瞑って顔を背けた。まさか、あの飲み物に下剤を盛られたのか。
「お腹の中は綺麗にしないとね。これからぼくもあの子たちもここで遊ぶんだから」
不穏な一言の直後、怜の後孔に衝撃が走った。体の内部に、ずぶずぶと温かい異物が入ってくる。
「ッぐ……!」
ぎゅう、と瞑った目に力を入れる。呻く声すら漏らさまいと歯を食い縛れば、自然に体にも力が入って、自分の中を侵す何かの存在を否が応でも感じてしまう。
「はは、そんなにぼくの指咥えて美味しい? ならもう一本増やしてあげようか」
宣言通り、続けて二本目が体内に侵入してくる。違和感よりも痛みが強く、噛み締めている歯が強さに耐えきれずに、がり、と僅かに横へずれた。そんな怜の反応にまた笑いを溢して、麻寿の指が怜の中を探る。
痛い。苦しい。気持ち悪い。
それでも、耐えるしかない。麻寿が満足するまで、耐えて、耐えて、耐えるしか、囚われた怜に残された道はない。
「んーなんかめんどくさいな、これ。もういいか」
言葉と共に腸内を荒らしていた体温がなくなる。体に訪れた束の間の平穏に、食い縛る力を弱めて止めていた息を吐いた瞬間だった。
「──ッア゛ァ!?」
先程とは比べ物にならない質量のものが、怜を貫いた。目を瞑ることすら忘れて衝撃を受けた下半身へと視線をやれば、血管が浮き出るほど猛った麻寿の一物の先が、自分の中へと消えている。
「せっま……搾り取られそうだよ、怜」
「ぁ、っがぁ……ッ!」
一呼吸遅れて脳内に届けられた痛みの信号によって、再び怜の口から呻き声が吐き出される。そんな怜の反応を確かめたあと、文字通り胎内を引き裂くように侵入してきた棒が、自身の快楽を求めて大雑把に前後に動き出した。柔らかい腸壁を遠慮なく抉る凶器が、怜の正常な呼吸を奪う。吐き出した息の分を吸うことはできず、魚のようにぱくぱくと口を開閉することしか出来ない。
「っあ゛、んん゛、っぐ、ぁッ」
麻寿が怜の体を揺さぶるのに合わせて、濁音にまみれた悲鳴じみた声が出る。摩擦熱なのか、自分を犯すものが持つ熱なのか、胎内が燃えるように熱い。挿入された時よりも幾分か動きが滑らかになった麻寿自身が、ピストンの速さをどんどん上げていく。もはや息をすることすら命懸けで、怜は手当たり次第自分の周りにある空気を口に入れては吐くことを繰り返した。
生理的な涙で滲む視界に影が落ちる。その影がどんどんと濃くなり、熱い息が怜の顔にかかった。
「っ……はあ、怜の中最高だね。ずっとこうしてたいけど、あの子たちも待ってるし、もう出すね……ッ」
「──あ゛ッ……」
ポタリ、と怜の顔に水滴が落ちたと同時に、胎内を埋めていたものが脈打った。激しい耳鳴りの中で微かに聞こえる、びゅるる、という絞り出す音と共に、火傷してしまいそうなほどの熱を持った何かが、腸の奥へと浴びせられる。一回、二回と緩く前後に動いたものが、ずるりと腸から引き抜かれた。支えを失った体が、ぼと、と地面へと落ちる。ジンジンと燃えるように痛む孔の周りの肌を濡らすものが、出来れば自身の血であってほしいと霞み出した頭で思う。
「ふふ、紅と白で綺麗だよ、怜」
愉悦を感じる声を怜の耳元で呟いた麻寿が、無理矢理抉じ開けられたからか、元に戻り損ねてくぱくぱと動く怜のアナルの縁をくるくると指でなぞる。痛みに混じるむず痒い感覚から逃げるように、浅い呼吸を意識的に行った。
「でもね、怜には黒も似合うと思うんだ」
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