きみとわたしと夏休み

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「7月24日土曜日、午後6時から、前夜祭」 「7月25日日曜日、朝8時、御神輿パレード」 「7月26日月曜日、プール」 「えぇ、疲れてるからその日はマンガ図書館にしよう」 「だったらゲームは? 聖剣進めたい」 「幽霊船でしょぉ! 無理!」 「怖がり」  今日は7月23日金曜日、私と山ちゃんは終業式を終え、それぞれの家で昼ごはんを食べた後、どちらともなく学校の旗立台に集まって、青空の下夏休みの予定表を書いていた。  山ちゃんは去年、小学三年の春に地方から転校してきた男の子。  こうして二人で仲良く予定表を組むほど仲良くなったのには理由があって、山ちゃんと私はやたらと行動範囲が被る。  初めは一緒に遊ぶこともなかったのだけれど、クラスみんなでかくれんぼや缶蹴りをする内に話すようになって、自然と放課後や休日に偶然会ってはつるむようになっていた。 「あ」 「あれ、佐山くんじゃん」  声がして振り返ると、クラスメイトの佐山くんが私たちをじっと見ていた。  どうしたのかと声をかけた私の服の裾を山ちゃんが急にぐいっと引く。  それに気を取られているうちに、佐山くんは「おーい! みんなー!」と大声を出して走って行ってしまった。 「何あれ! 嫌な感じ!」 「いいよ、行こう」  山ちゃんはそう言ったけど、私は訳が分からず「どうして?」と眉を潜めた、直後。 「わ、ほんとだ!」 「ひゅーひゅー、お二人さん、仲良いね〜!」  佐山がクラスメイトを連れて戻って来た。  私はその瞬間に顔が真っ赤になって、よくわからない気持ちで泣きそうになるのをぐっとこらえる。  そして何も言わないまま黙ってその場から逃げてしまった。  夏休みの予定表も、山ちゃんのことも置き去りにして。 ◆  縁側で寝転がっていると、高かった日はいつのまにか夕日になって、辺りを黄昏に染めていた。私は顔にうちわを置いて仰向けに寝転がっている。 「えっちゃん」  山ちゃんの声がした。  私は咄嗟に眠っているふりをする。  じゃり、と庭の土を踏み締める音がして、微かに視界が暗くなる。 「忘れ物」  それだけ言って、山ちゃんは行ってしまった。  私は起き上がると、脇に置かれた夏休みの予定表を見る。 「あ」  私は跳ね起きた。  落ち込んでいる暇はない、さすが山ちゃん、私の親友。  予定表には知らないうちに『7月24日土曜日緊急会議、あいつらをぎゃふんと言わせる方法』と書いてあった。
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