夜にしか咲かない花に誓って

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 店を出ると夜の(とばり)が下りていて、若者がたむろしているのが見えた。先程の二人組の男はすでに街へ消えている。そんなことはどうだってよかった。どこにいようが、なにをしていようが、必ず見つけ出すことができるのだから。  もう二度と使わないと誓ったこの能力。今使わなければ、この先本当に使用することはないだろう。  自宅へと戻ったネルは、引き出しから一本のナイフを取り出した。  それは王から渡されたあの王家のナイフ。街を離れる際にネルは王様へこのナイフを返却しようとした。自分には持つ資格なんてないと訴えて。しかし王様はそれを拒んだ。 『ネル。私はお前のことを本当の息子のように思っている。これはお前に渡したものだ。どう使おうがお前の勝手だ。いらなければ捨てても構わない。だがな、いつかそれが必要となる時が来るかもしれない。その時まで持っていてくれ。王家のナイフは悪を断つ。それを忘れずに』  王様はウェンズリーの仇討ちを促していたのかもしれない。いつか犯人が見つかったとき、それを使えばいい、と。  棚の上には植木鉢がある。青く光る美しい花。夜にしか咲かないリーネルの花は三年前からずっと育て続けているものだった。ウェンズリーに対する贖罪として。 「ウェンズリー。随分と待たせてしまって、申し訳ない。僕自身も諦めていたんだ。本当に申し訳ない。でも、ようやくだ。ようやくこれで、君の苦しみを解き放つことができる。力を貸してほしい。お願いだよ」  ネルはポケットから吸い殻を取り出し、ゆっくりと目をつぶる。そして祈りを込めた。  暗闇の中に浮かび上がる淡い光。それは確かに存在していた。
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