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「修くんでたよー!」
「おー…ぉ…」
ドアが開いて七海の方を振り返った修作だが、すぐに視線を外す。風呂上がりで髪が濡れ、さらに見慣れた自分の服を着た七海の姿に不覚にもドキっとしてしまったのだ。
「おっ、俺も風呂入ってくるわっ!」
「えっ、あ、うん。…??」
上ずった声でそう言うと修作は慌てて部屋を出ていく。ドタドタと階段を駆け下りる音を、七海はドア越しに不思議そうに聞いていた。
部屋にひとり残された七海は、妙な緊張感で落ち着かずキョロキョロと辺りを見わす。突然の訪問にも関わらず修作の部屋はとてもきちんと片付いていて、本棚にぎっしりと並んだ参考書や問題集が何となく兄の千晶を思い出させた。
「あ!」
ふと思い立って、七海は自分の荷物の山の中からいつも持ち歩いているノートと鉛筆を取り出し、ベッドに寄りかかるようにして床に座る。 緊張をほぐすため、そして今日あった楽しかった出来事を忘れないため、七海は絵に描き残しておこうと思った。
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