17人が本棚に入れています
本棚に追加
「おまたせ」
「……」
しばらくして修作が部屋に戻ってきたが、七海は絵に集中していて視線はノートから外れない。「なに描いてるの?」と顔のすぐ近くで声をかけられてようやく修作の存在に気づき、七海は修作の方に目線を向けた。
「今日のこと、残しておこうと思って」
「…一ノ瀬、絵描くの好きなの?」
「うん!」
修作にはノートを見せたことがなかったし、そういえば絵を描くのが好きだということも一度も話したことがなかった。「見てもいい?」と聞かれ、七海は手を止めて修作にノートを渡す。真剣にページをめくる姿を見て、七海は「なんか恥ずかしいな」と頭を掻いた。
「これ、俺?」
「あ…」
しばらくページをめくったところで修作の手が止まる。差し出された部分には確かに修作の絵が描いてあり、 端が少し切り取られたそのページを見た七海はクスクスと思い出し笑いをした。
「なっ、なんだよ」
「前に…空き教室で会ってた時、修くん待ちくたびれて寝ちゃってたことあったよね?その時描いたんだ。…ぷぷっ、修くん全然起きないんだもん」
「はは、そっか」
修作は恥ずかしそうに笑い返し、もう一度絵の方に視線を落とす。友達の姿だったり、景色だったり…鉛筆やペンで簡単に描かれたものだが、七海の大好きが詰まったノート。 修作はそれを1ページ1ページ、大事そうにめくっていった。
最初のコメントを投稿しよう!