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修作が行く大学は地方にあるため、今住んでいるところからは新幹線と電車を幾つも乗り継いで行かなければならない。これからはいわゆる“遠距離恋愛”になるのだ。永遠の別れではないのだけれど、好きな人と離れ離れになるのはやはり悲しいと七海は思う。
ベッドに横になってそんなことをぼんやり考えていると、机の上に置いてあるスマホが鳴っているのに気付いて七海は慌てて手に取る。画面を見ると修作からの着信で、通話ボタンをスライドすると電話のむこうからはやけに賑やかな声が聞こえてきた。
「もしもし修くん?」
『おー、急に電話してゴメンな』
「ううん、大丈夫。どうしたの?」
『あのさ、明日の夜ってなんか予定ある?』
「明日は…ううん、ないよ」
『そっか、そしたらさ…ウチにメシ食いに来ない?』
「ご飯?」
『そう。実は…うわっ、ちょっと何すん…』
『七海ちゃーん?』
「えっ?修…作先輩のお母さん??」
『ばあばもいるよー』
「おばあちゃん!」
電話先で修作の家族の声が変るがわる聞こえてきて、七海の顔は思わずほころぶ。
『…ゴ、メン!実は明日、俺の送別会?やろうとかって話になって…で、母さんがお前も絶対誘えって。俺はあとで連絡するって言ったんだけど、いま電話して!ってうるさくて…痛っ!』
『もー、うるさいって何よー!』
『だから叩くなって!!』
電話先での様子が手に取るように分かり、七海は今度は堪えきれずに声を出して笑ってしまった。
『…っと、それで明日は…』
「うん、絶対行く!」
『おう。それじゃあ駅ついたら迎えに行く』
「うん!楽しみにしてるね!」
電話を切った後も、七海はしばらく笑いが止まらなかった。修作も修作の家族も、温かくて優しくてみんな大好きだ。
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