オーマイダーリン ※

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「修くんちょっと待ってて、カバン取ってくるね!」 いくつかの教室を見て回ったあと、修作は七海に案内されて美術室へやってきた。美術部員たちの作品展示を一通り見終えると、七海は自分の荷物を取りに準備室へと走っていった。 ひとり残された修作は壁に掛かった時計に目を向ける。3時を少しまわったところで、気がつくと文化祭初日の終わりの時刻まで1時間を切っていた。美術室にも数人の見物客がいる程度で、先ほどまで廊下から聞こえてきていた賑やかな声も、いつの間にかだいぶ静かになっていた。 大きな窓から入ってくるほんのりオレンジの夕焼けの色にふと懐かしさが込み上げ、 「お待たせ!」 そう言われて振り返り、オレンジに染まる七海の姿を見たら、張り詰めていたものがプツリと音を立てて切れる。 「…ナナ、最後に行きたいとこあるんだけど」 「ん?いいよ!行こー!」 理性というのはいとも簡単に崩れるものだと修作は思った。相変わらず無邪気に笑う七海に後ろめたさを感じながらも、その胸は否応なく高鳴るのだった。
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