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すっかり人のいなくなった第2校舎と第3校舎を繋ぐ渡り廊下を言葉数少なめに歩く修作に疑問を感じ、七海はその背中を追いながら声をかける。
「修くんこっち何もな……あ、」
そう言いかけて、七海は廊下を曲がったところでハッとする。タイミングを図ったように手を握られ、振り返った修作が笑うのを見て、七海は久々に心臓が跳ねるのを感じた。
【学校関係者以外立ち入り禁止】と書かれた貼り紙をすり抜けて、二人は廊下をさらに奥へと進んでいく。第3校舎2階の一番奥にある、かつて幾度となく訪れた場所。
「うわ、懐かしー」
「オレもここ来るの久々だよ!」
そう言って、七海は以前と同じように窓を開ける。 薄暗くて埃っぽい空き教室は、不要になった備品や脚の歪んだ机が雑然と並んでいて当時とほとんど変わっていない。そして教室を染めるオレンジもまた。まるであの頃に戻ったような、不思議な錯覚に陥る。
窓を開け終えたタイミングで身体を引き寄せられ、バランスを崩した七海は修作の腕の中にすっぽりと収まるように倒れ込み、後ろからギュッと抱きしめられた。
「やっと二人きりになれた」
「……うん」
くるりと向きを変えて修作と向き合うと、七海はゆっくりと背中に腕を回して抱きしめ返し、その温もりを確かめる。
会いたかった
胸に溜め込んでいた気持ちを伝え合うと、二人の距離は一気に縮まる。
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