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片付けを一通り終えて三和子に修作の居場所を聞くと庭に出ていると教えられ、七海はスニーカーをつっかけて外へ出る。2月の夜はまだ少し冷え、空気が澄んでいて星がよく見える。ひとり畑を眺めている修作の姿を見つけて七海が側へ駆け寄ると、それに気づいた修作は「コケるなよ」と笑いかけた。
「今日は…ありがとな」
「ううん、オレの方こそ…呼んでくれてありがとう!超楽しかった!」
「やかましい家族でゴメンな」
「……ぷっ」
「なっ、何笑ってんだよ」
「だって…家族といる時の修くん、いつもと全然違うんだもん」
七海は修作のことを、とても真面目で自分と比べてそんなに目立つようなタイプではないだろうと思っていた。自分といる時も感情を思いっきり表に出すことは滅多になかったので、家族の前で表情がコロコロと変わる様子がとても新鮮で、そんな修作が見れてとても嬉しかった。
…けれど同時に、そんな新しい発見をすることもしばらくできなくなるんだと気づいてしまい、胸の奥がチリっと痛んだ。
「…いつ、下宿先に行くの?」
「卒業式が終ったら、1週間後の新幹線で」
「そ…っか。準備とか忙しい?」
「うん、ちょっとな。来週は学校行けないかも」
卒業式まであと1週間ちょっと。修作と過ごせる時間は本当にあと僅かしか残っていない。
「修作ー!七海ちゃん、帰り遅くなっちゃうからそろそろ切り上げなさーい」
三和子の声ではっとする。ポケットからスマホを取り出して時刻を見ると22時を少し回ったところだった。修作の家から七海の自宅までは、電車と徒歩で約2時間。終電にはまだ間に合う時間なのだが…。
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