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「なぁ、一ノ瀬」
修作に声をかけられる。まだ帰りたくない、七海はそう思った。…でも修作は優しいから、きっとこの後「駅まで送っていく」と言ってくれて、それでサヨナラして…そうしたら次に会うのはきっと卒業式当日だろう。
そう思って涙が溢れそうになった時だった。
「今日…泊まってくか?」
予想外の言葉に面を食らった七海は少しの間のあと、大きな目をさらに大きく見開いて修作の顔を覗き込んだ。
「いや、あのっ…変な意味じゃなくて、その…だいぶ遅くなっちゃったし、明日休みだし…」
必死に説明する修作の姿を見て、なんだか恥ずかしさがこみ上げてくる。七海は俯き気味に「ちょっと…親に聞いてみるね」と言ってスマホを取り出した。
家に電話をかけ終えた七海の顔をどうだった?という表情で修作がのぞき込むと、七海はニッと笑い返す。
「ご両親にもよろしく伝えてって」
「そ…っか」
家の中に戻って修作がこのことを三和子に伝えると、「こちらこそ、遅くなっちゃってごめんなさいねー」と、申し訳なさそうに七海に頭を下げた。
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