17人が本棚に入れています
本棚に追加
——どれだけ悲しみに打ちのめされたところで、カイリが生き返るわけではない。
カイリが死んでからの一年半、積極的に死のうと行動したのは凪の森に再び足を踏み入れたあの日くらいのもので
それ以来しぶとく生き続けている自分に嫌気が差していた。
それでも、生きているうちは両親に迷惑をかけないよう、日々の仕事をせっせとこなしてきたのだが、
やがて両親から「そろそろ良い相手はできないのか」と聞かれるようになった。
新作島では中学を卒業したらすぐに働いて、それから結婚もすぐにする。
男子は18歳になると同時に、その時交際している相手と入籍する者も多く、
16歳になっても未だ彼女を作ったことのないミナトに対して
18歳で結婚して早いうちに子どもを産めるよう、今から特定の相手を作っておいたらどうだ——と、遠回しにだが頻繁に背中を押されるようになった。
両親に迷惑をかけないことだけを生きるよすがにしていたミナトは、
自身が結婚を望んだことはなかったが、生きていく以上はそろそろ恋愛にも目を向けなくてはと考えるようになっていた。
そんな時に、かつて憧れていたナナミからの告白。
きっとこれから先、ナナミよりも魅力的な女子から告白されることはないだろう。
島の同年代の女子は全員顔見知りだが、過去に恋心を抱いた異性はナナミだけだ。
ナナミからの申し入れを断ったら、たぶんそれ以外の誰かから交際を申し込まれたとしても、自分は首を縦に振らないんじゃないか。
ミナトはそう考えると同時に、頭にカイリのことがよぎった。
カイリがもし生きていたら、俺は絶対ナナミとは付き合わなかった。
だけど——カイリは死んだ。
そろそろその事実を受け止めなければ、俺は一生灰色の毎日から抜け出せない。
死ぬ勇気がないんだったら、少しでも前向きに生きていくことを努力しなければならない。
だったら、これは前を向いて一歩踏み出すための、最初で最後のチャンスかもしれない——
中学の時はあれほど忖度していたトモヤも、卒業してそれぞれの仕事に就いてからは毎日顔を合わせるようなこともなくなり、
遊びの誘いや無茶振りをされる頻度も昔ほど多くはなくなっていた。
それからナナミの話ではトモヤも別れに納得し、合意のもとに関係を解消したと語ったため、今ならばそれほどトモヤの恨みを買うこともないだろう、とミナトは考えた。
——そんなあれこれを打算的に考えていたせいで、返事をするまでに長い間が空いてしまったが、
最終的にミナトがOKをしたためナナミは嬉しそうな笑みを見せた。
最初のコメントを投稿しよう!