18歳

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「……それは」 トモヤは言葉を切ると、ぶるりと肩を震わせた。 「自分がリスクを背負ってでも、俺の幸せを壊したかった? ナナミと婚約した俺のことを、一番幸せな時期であろう今を狙って貶めたかったのか?」 「……違う」 トモヤは小さな声で否定すると、首を横に張った。 「あの肝試しの日から三年間——毎晩、俺の夢にカイリが出て来るんだ」 「夢?」 「夢の中で、俺は何度もカイリに土下座をした。 だけどカイリは返事をすることも、俺の目を見てくれることもなくて—— カイリにあんなことをしといて許してもらおうだなんて虫の良い話だけど、 夢の中の俺はずっとカイリに向けて頭を下げ続けてた」 トモヤが言う通り、それは虫が良すぎる。 どんなに謝ったってカイリは戻って来ないのに、許されようとしてる図々しさに腹が立つ。 ミナトは内心苛立ちながらも「……それで?」と尋ねた。 「それで……つい最近のことだ。 夢の中のカイリが、初めて俺に対して口を開いたんだよ。 夢とはいっても、三年間ずっと同じ態度だったカイリが初めて喋ったんだ」 「……なんて?」 「『ミナトに真実を話して欲しい。真実を話して、ミナトがナナミとの婚約を破棄するよう説得して欲しい』——って。 そしたらもう、俺の夢の中には出て来ないってカイリがあったから……俺——」 「——ははははっ!!」 ミナトは声を上げて笑った。 馬鹿じゃねえ? トモヤってこんな馬鹿な奴だっけ? 中学時代はあんなに恐れて忖度してた相手とは思えないくらい、小物感たっぷりになってるしさ。 夢の中でカイリが、俺がナナミとの婚約を破棄するように言ってきた、だって? 「——悪いけど、そんな話は信じられないよ」 「……ミナト、でも俺——」 「もういいや。帰って、トモヤ」 「っ……」 トモヤは頬のこけた顔を上げ、未だ何か言いたそうにしていた。 だがミナトの冷めた目つきを見て慄いたのか、大人しく腰を上げた。 「——俺の話を信じろってのも、確かに無理な話かもしれないけどさ……」 玄関で靴を履いたトモヤは、ドアに手を掛けながら言った。 「ナナミのことは信用し切らないほうがいいと思うぜ。 カイリを生贄にするよう言い出したのは、間違いなくナナミだ」 そう言い残しトモヤが去った後、ミナトはずるずるとその場に崩れ落ちた。 ……嘘だろ。絶対、トモヤの作り話だ。 でも、疲れ切った相貌も、切羽詰まった表情も作り物だとは思えなかった。 俺はどうしたらいい? ナナミに、真実を聞き出すべきなのか? でも、本当に分からない。 なんでナナミがカイリを——
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