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信じられない。
カイリが生きていた。
ミナトは、目の前で微笑みを浮かべている青年を食い入るように凝視した。
ガラス玉のように透き通った瞳、柔らかそうな髪。
白くてきめ細やかな肌、そしてほんのりと漂うシトラスの香り。
やっぱりカイリだ。
あれから10年経って、れっきとした大人の容貌になったけれど、間違いなくカイリだ。
どうして?
カイリは死んだはずだろ?
「……ねえ、ミナト」
中学時代より低くなった声で囁くカイリの声は、ミナトをぞくりとさせるような色気があった。
「僕のこと、死んだと思ってた?」
「……思ってた……」
するとカイリは、くすりと微笑んでみせた。
「そうだよね。
新作島の人たちはみんな、僕が死んだと思ってるはずだよ」
「……ごめん。
カイリが生きてたなんて、少しも信じてなくて——でも」
ミナトはふらふらとカイリの近くまで歩み寄ると、改めてカイリをしっかりと見つめた。
「でも——生きてたって分かって、凄く嬉しい」
あまりの衝撃に、「嬉しい」と言いながらも固い表情しか作れないことを忍びなく思いながらも、ミナトは続けて尋ねた。
「……あの日、何があった?」
「……」
「俺——肝試しの後、長いこと気絶しちゃってて……。
後から人伝に聞いたんだ。カイリがナギの生贄になったって。
それで俺、カイリはナギに殺されてしまったんだ……って。
——なあカイリ。カイリの体験したことを、カイリの言葉で教えて欲しい」
するとカイリは、少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。
「……長くなるから、座って話すよ。
部屋の中、お邪魔してもいい?」
「!——もちろん」
ミナトは、ちらりと部屋を見渡した後に言った。
確かに、どう考えても玄関口で立ち話するような内容じゃないよな。
でも、俺んち散らかってるんだよなあ……
ミナトは今度はカイリの方を一瞥した。
カイリ……すげー良い服着てるな。
ブランドに疎い俺でも知ってるような海外ブランドだし。
あと、なんていうか肌も髪もツヤッツヤ。
元々整った顔してたけど、あの頃よりもオーラがあるというか。
——ミナトは、カイリから滲み出る上質な雰囲気に少し怯んでしまった。
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