15歳

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あたたかい。 はじめに感じたのはそれだった。 裸同士で誰かと抱き合うなんて、赤ん坊の頃に経験したかどうかだ。 人肌をこんなにダイレクトに感じるなんて経験はほぼ初めてのことで、なんと形容したらいいか言葉に迷ったが、次にミナトの脳裏に浮かんだのは 気持ちいい——だった。 あたたかくて、滑らかな肌を抱きしめると、純粋に気持ちが良いと感じた。 暫くミナトがその感触を堪能していると、やがてカイリが遠慮がちにミナトの腕の中から離れていった。 「……ありがとう、ミナト……」 「……えっ?」 唐突に抱擁の終わりを告げられ、ミナトが再びぽかんとした表情を浮かべると、 カイリは頬を真っ赤に染めたまま、床から服を拾い上げて言った。 「お陰で、一生忘れられない思い出を作れた」 「……え?終わり……?」 「うん」 「今のでカイリの思い出作りは終了したの?」 「うん。ごめん」 「ごめんじゃなくて!」 ミナトは咄嗟にカイリの手元から服を抜き取った。 自分でも、なぜそんな行動に出たのか説明がつかなかった。 「ミナト?」 「俺、正直さ——もっとこう、色々するつもりなのかなって思ったんだけど……」 「これ以上を求めたら、ミナト、僕のこと嫌いになるでしょ」 カイリは視線を逸らしたまま言った。 「ていうか、もう既に引いてるよね? ミナト、すごい顔を強張らせてたし……」 「そりゃびっくりしたさ!? びっくりしたけども——引いたりしてないし……! それに多分……カイリになら、何されても嫌いにとかならないから」 ミナトが言うと、カイリは驚いたように目を見開いた。 ガラス玉のような瞳を精一杯見開き、ミナトを見つめるカイリ。 ミナトはそんなカイリを目にし、本能的にカイリの手を掴んでいた。 「絶対、カイリを嫌いになったりしないから。 カイリがしたいこと、ほんとはもっとあるでしょ? ——それ、しようよ」 「……うん」 カイリはこくりと頷くと、唇を震わせながら言った。 「キスしよ、ミナト……」 ——ミナトが頷いて目を閉じると、カイリはミナトの唇にそっと口付けた。 柔らかい感触が一瞬だけ唇に伝わる。 ファーストキス、カイリとしちゃった—— ミナトはぼんやりと瞼を開け、不安そうにこちらを見つめているカイリを視界に捉えた。 ——ほんとは、ナナミとキスする妄想、何度もしてたんだけどな。 ナナミと付き合えることなんてないって分かってるけど、妄想するのは自由じゃん? ナナミとじゃなくても、きっと島の女の子の誰かといつかキスして、それ以上のことだってする日が来るだろうってドキドキしながら未来に期待をしていた。 そんな甘い妄想の中に、カイリの顔が浮かんできたことは一度もなかった。 なかったのに—— ミナトははっきりと目を開くと、今度は自分からカイリに口付けた。 「んっ……!」 カイリの口元から、自然と声が漏れる。 ミナトは、驚いたように目を開けているカイリと視線を合わせ、唇を重ねたまま、ゆっくりと舌を捩じ込んでいった。
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