意思を持って

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意思を持って

 墓の前に立つ。  貴方はどんな言葉を放って生きてきたのだろうか。全ての言霊に何が宿っていたのだろうか。小さな石棺は、大海原を漂うかのように、ゆったりした時間が過ぎていくのだろう。  数十年生きた証が、意味のわからない言葉と共に石に彫られて刻まれる。これが人生で残したものだと言うのなら、こんなもの誰かにくれてやる。  何を残せたか、何が貴方を突き動かすのか、多分それは変わらない何かで、何百年も受け継いだ血液に、極わずかに入った思いであって。言い表すには至難の業かもしれない何かをずっと永遠に持ち続けている。  今日も僕達は生きている。今日もかけがえのない、欠けることの無い一日が過ぎている。 何かを残せていればそれでいい。何かが生きていたらそれでいい。 夢は永遠にこの世で生きる。来世を待つ暇がない。  さよなら、過去の日々、生暖かい風が背中を押すから、今日もゆっくり歩いていこう。 石以外にも残せる様に。そんな子供じみた意思を持って。
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