障体☆しょうたい

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障体☆しょうたい

 霊廟から出てきた女の足取りは軽やかだった。着ていた衣服が溶けるように消えさると、それは影そのものが歩いているかのような細い姿に変わった。その足跡にウジのわいた雌牛(ホルスタイン)の乳房と豚の肛門(アヌス)がドサドサリと落ちた。魅惑(チャーム)の呪文が解かれた姿は、黒き魔女(ベルゼブ)そのものだった。 「憎っくき町長の墓を汚して得る精気は格別じゃわい。して今宵の獲物(おとこ)は特に活きが良かったの」  黒き魔女は手の甲で口元を拭うと、ヒッヒッヒッと卑下た笑いをこぼした。  男を引っ掛けた老木のもとに黒き魔女が帰り着くと、その樹皮が静かに開き墓標が表れた。長きに渡り樹木に飲み込まれ忘れ去られた墓標に、黒き魔女は還っていった。
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