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森の奥に置き去りにされた私が泣いていると森の奥から毛むくじゃらの化け物が現れました
その森には人食いの化け物が現れるという噂がありました。
きっとそいつにに違いない。「食べないで」とワンワンと泣く私を抱きかかえると森の更に奥、小さな小屋に私を連れていきました。
「食え」と差し出された暖かなスープ、それを前に恐る恐る尋ねます
「食べないの?」
その言葉に化け物はにやりと笑い
「食べるさ、もっと大きくしてからな」そう答えます。
やっぱり食べられちゃうんだ。ポロポロと涙を流しながら食べたスープの味はとても優しい物でした
「食べないの?」
あれから何度か季節が巡りました。
化け物が出すご飯を毎日食べていた私の手足はスラリと伸び、これ以上背が伸びることもないでしょう
「食べるさ、だが」
化け物は私の身体をちらりと見ると
「まだ食うには肉も脂も足りんな」
そう言って私の器にスープを注ぎます。
もっと食えということなのでしょう
「いじわる」
受け取ったそれをゆっくり啜ります。庭で一緒に育てた人参がころりと口に転がりました。
「まだ食べないの?」
部屋を掃除中、ふと気になって尋ねました。
腕や足、お腹にも少々お肉がついて、気がつけばおばさんと言われるような歳になっていました
「食べるさ、だが」
化け物は棚の上を拭きながら化け物は答えます
「俺はもっと熟した肉が好きなんだ」
「ああそうかい」
化け物の返事を流しながら掃き掃除を続けます。集まっていく沢山の抜け毛に今夜また櫛をいれてあげようかな等と思いながら
「食べないのですか?」
すっかりお婆さんになってしまった私が尋ねます。
足腰も衰え、ベットから起き上がることもできない。きっと後数日だと自分でも分かります。
「食べるさ。もうすぐな」
ぶっきらぼうに返す化け物の頬に手を当てます。
ほろほろと手を濡らす暖かな液体
「ちゃんと食べてくださいね」
目をつむり、そう小さく呟きます。
何時までもあなたと共に居たいのですから。
だからちゃんと
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