第三章

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「俺のを触ってくれ」  久賀は雪に「してほしい事」を告げた。  告げられた本人は傾げている首を更に捻って、目を猫のように丸くしている。 「…………?」  その大きな目をパチパチと瞬きして「俺のとは……?」と訊ねられ、久賀は困ったように眉を下げて短く唸った。  雪が性的なことに疎いのは、分かりきっていたことだが……。 「久賀様?」  きょとんとして首を傾げる仕草は純そのものだ。  久賀は雪から目を逸らし、天井を仰ぐ──自身のを触ってほしい、なんて今までの俺なら絶対口にしない。雪に無理強いはしたくないからだ。  しかしだ。  偶然に知ってしまう。  久賀は帰りが遅い雪を太助へ迎へに行った。  あるべき雪の姿が家にいないだけ不安になる。彼女がどこかで倒れてしまっているのではないか、誘拐されていないか、男から襲われたのではないか──俺が知らないところで傷付いているのではないか──……。  太助の戸を開けようとする寸前──時に聞こえてきた会話が偶然に聞こえてきた。 『僕は城下町へ行くつもりです』 『生き別れた妹を探したいんです』 『体力がついてから久賀様の元を離れるつもりです』  後頭部を殴られたような衝撃だった。 (雪が、俺から離れようとしている?)  実際、頭に殴られたような痛みが走る。ズキズキと痛み、吐き気まで催した。  
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