第三章

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 久賀の手を握りめる彼女の手に力が入る。  顔を真っ赤にした雪は、興奮気味に声を荒げて早口にで捲し立てた。 「魔羅がなんなのか教えてください! 魔羅ってどこにあるんですかっ? 魔羅はどう触ったら良いんでしょうかっ? 魔羅は僕にもあるんですかっ? 魔羅は」 「分かった、分かったから落ち着くんだ。あと、その単語は連呼するな」 「どうしてですか?」  その単語を口にしてはいけない理由が分からないようで、雪は首を傾げる。  そして、雪は何か閃いたようでハッとして大きな目を見開いた。 「そういうことですね! 魔羅って卑猥な言葉なんですねっ。だから、言わない方が良いんですね」  ぎゅうぅうううっ、と顔の目と口を中央に寄せて顰め面になった雪に「どうした」と訊ねた。 「卑猥なことを言われたら、こうしろって久賀様が」 「それは俺以外に言われたらだ。俺にはしなくていいんだぞ」  雪は顰め面になっても可愛い。この世にこんなに可愛い生き物が存在するなんて雪と出会う前は知らなかった。そんな彼女に触れたい、触れてもらいたいからって、己の魔羅を触ってもらおうとしているなんて、俺は最低な男だな。 (だからと言って止めるという選択肢はないんだよな) 「雪。魔羅っていうのはな」  雪の手の中から、己の手を抜いて彼女の右手首を掴んだ。それを久賀は下半身へと誘う。 「これだ」  布越しに触れさせて、雪の反応を観察する。彼女は、一瞬固まった後に顔がみるみる真っ赤になっていく。 「久賀様の、足の間についているやつ……」 「そうだ。これが魔羅」 「これは、たしかに、いやらしいやつですね……」 「雪の口からいやらしいやつ、って聞くとムラっとするな……もう一回言ってくれ」 「さっきは、言っちゃ駄目だって久賀様は仰いました」  雪は目を逸らして、久賀の手の中から自分の手を抜こうとする。久賀は咄嗟に力を入れて彼女の手を更に己に押し付けた。 「えっ、あ、っ久賀様」  布越しでも感じる熱が掌に伝わって、久賀の手を振り解こうとするも力が強い。 「これで、いやらしい事をされたのを覚えてるか?」  赤く染まった彼女の右耳にそう囁く。雪が小さく頷いたのを見届けて、久賀は続ける。 「──俺になんでもしてくれるんだろ?」 「も、もちろんです……」 「約束したもんな」 「ぼ、僕はこれをどうしたら良いですか……」  震えた声を聞いて胸が痛むも、それはほんの一瞬で、彼女の涙を浮かべながらも気丈な表情を見て、久賀は唾を飲み込んだ。  雪の手の中にあるそれが、硬さを増していく。雪に触られているだけで興奮するなんて、童貞のようだな、と久賀は自分自身を嘲笑った。 「あのっ。久賀様は喜んでくださいますか? 久賀様は、僕に触られたら嬉しいですか……?」  潤んだ目をしながら、真摯に見つめてくる彼女に「あぁ」と短く返事をした。  雪の耳元に唇を当てて、熱い吐息と共に久賀は呟いた。 「雪の手で、俺をいかせてくれ」
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