第三章

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 深い意味で「他の男の人に付いているのか」と訊ねたわけではないのは分かる。純粋に疑問に思っただけなのだろう。だが、それでも疑問に思ったという事は、俺以外の魔羅を少しでも脳裏に浮かべたという事だ。俺の事だけを脳裏に刻めばいい。  少し強めに言ったせいで、雪の肩が落ちるのを見て言い過ぎたと反省するも……気持ちとは裏腹な事を久賀は吐いた。 「──手が止まってる」  雪の右耳に、そう囁くと彼女はハッと息を呑む。そして、手の動きを再開してゆっくりと上下に動かした。 「もう少し、きつめにしてもいい」 「こうですか……?」  遠慮がちに指に力を入れた雪の耳に「まだ力を入れていい」と囁いた。  ギュッと力を入れられて久賀は短く唸る。咄嗟に謝った雪に「大丈夫だ」と間髪入れずに答えて、「続けろ」と囁く。 「もう少し、早く動かすんだ」 「こうですか……?」  久賀自身を摩擦する動きを速め、彼女の耳に「上手だ」と褒める。褒められて、嬉しそうに頬を緩んだ表情は視界に入り久賀も口元を緩めた。  雪の右耳を隠す髪を耳の後ろに掛けて濡れた唇を当てると、雪が驚いて手を止める。 「続けろ」  久賀の言葉に、雪は素直に従った。 「終わるまで、手を止めるなよ」 「は、はいっ──ひゃっ」  久賀は雪の右耳を嬲るように舌を這わせた。  すると、雪の肩が震えて、見えている肌が羞恥に染まる。久賀は耳の孔に舌先を差し込んだ。  下半身から響く卑猥な音が届いていない右耳に、ぬめつく水音をわざと聞こえるように音を出す。  水音と耳に与えられる快感に精一杯になりながらも、久賀の言いつけ通り手を止めなかった。 「く、久賀さ……っ」 「耳を舐められるだけで、いっぱいいっぱいになるのって……」 「可愛いよ」と掠れた吐息で囁いた。  久賀の声から逃げるように、雪は頭を振る。逃す気なんてない久賀は彼女の腰に手を添えて、雪をきつく抱き寄せた。
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