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唇の隙間から、掠れた声で雪が声を上げた。雪に戸惑う暇を与えないように耳朶を喰み、唇で優しく揉みしだく。
雪は耳の刺激に翻弄されながらも、久賀の言いつけ通り手は止めなかった。掌の中にある聳り立つそれを掌中で犯し、抽送を早める。
雪の耳に触れながら、久賀の呼吸が乱れてきて、呼吸と共に熱い息が彼女の鼓膜を犯した。
「っ」
雪の拙い手の動きは、今まで抱いた女からの手淫よりも下手くそだ──でも、一番興奮していた。脈打つ陰茎は彼女の手が気に入って、限界に近かった。
「ふ──っ」
屹立がブルッと震え、熱を出した。雪の手を汚していき、汁液が伝る感触が襲う。
「く、久賀様……っ」
雪は久賀の舌から逃げて、視線を下げた。久賀自身から手を離し褌から己の手をそろっと抜いて、手の中を汚した白濁色のものを狼狽えた様子でまごついていた。
白い肌に精液をつけた雪を見ていると、汚してしまったという罪悪感が己を襲うも久賀は頭を振ってそれを追い出す。彼女の汚れた手を手拭いで綺麗に拭きとってあげる。
「これ……」
「気持ち良いと、吐精する」
「それって、他のお」
雪が言葉を切った。他の男の話をするな、と言われた手前踏み留まったようだ。みんな同じなのか、気になって訊ねようとしたものの、これも男の話かもしれないから、叱られるかもしれない、と思ったようである。叱る、というより嫉妬される、という方が正解である。
指を一本一本丁寧に拭いていると、視線を感じて顔を上げた。大きな目でジッと見つめていて、何か言いたそうな雰囲気を感じ取った久賀は「どうした?」と優しく訊ねる。
「久賀様は嬉し、かったですか……?」
上手くやれてました? と不安そうに訊ねてきた雪に久賀は笑った。
「上手だったよ」
(人生で一番興奮した)
褒めると、雪は屈託なく笑う。
そして、照れたように目を伏せた。
(この子を、将来俺が汚す──それは、絶対に誰にも邪魔させない)
「俺が、射精したってことは、嬉しい、って事だから」
「じゃあ、去年の冬に、僕のお腹に出したのは、嬉しかったからですか?」
「──そうだ」
それを聞いた雪は目を上げた。
「僕なんかでも、久賀様のお力になれたんですねっ!」
(僕なんか──だなんて、自分を卑下することはやめてくれ)
「僕、もっと上手になりますからっ! 久賀様がもっと喜んでくれるように、たくさん頑張ります!」
「俺に喜んでもらえると、雪は嬉しいか?」
「はいっ。久賀様が喜んで下さるなら、僕はなんでもします」
「なんでも──?」
「はいっ」
弾ける笑顔は、久賀の事を何一つ疑っていなかった。
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