2.海辺の休日

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「あの様子だと、何か言いたいことがありそうだったけど……。直さえ無事ならいいんだ。何かあったら、すぐ連絡よこせ」  この時間じゃろくに寝てないだろうに、雪には悪いことをした。土産を買って帰ると約束して、電話を切った。  ホテルの窓からは海が見える。明るい空と海の色に心が浮き立ち、俺は海に向かった。  朝の浜辺にいるのは散歩する人、犬連れの人、そして、サーファーたちだ。夏ならまだしも、今は秋なのに。寒さも関係なく海に入る姿に、すごいなあと感心する。  海までの途中にあったコンビニで、フルーツサンドとおにぎりと牛乳を買った。昨日、勇気くんに会った階段まで歩いていく。なんとなく最初の場所に戻る感じだ。  潮風に吹かれながらの食事は気持ちがいい。おにぎりを食べて、デザートのフルーツサンドにとりかかった時だ。海から上がってきたサーファーたちが手を振ってくる。 「な・お・さーん! おはよー」 「ぅわっ、勇気くん……」  長袖半パンのウェットスーツを着た勇気くんは、体格のいいのがよくわかる。隣には、同じぐらいの背で、こちらもまたよく陽に焼けた男子がいる。二人はサーフボードを片手に、にこにこと笑っている。 (ツワモノが多い……)  俺は既にひと泳ぎしてきたらしい猛者たちに動揺を隠せなかった。 「朝からサーフィン?」 「この時間は人が少ないから一番いいんだ。それに、夜になったらバイトあるし」 「すごいなあ。泳いだ後に大学行って、バイトもするのか。俺ならそのまま寝てるな」 「まあ、好きなことなんで」  にこにこ笑う勇気くんも、その友だちも気さくだった。海をバックに三人で写真を撮る。SNSに載せていいかと聞かれて頷く。よく日に焼けたサーファーたちの真ん中で、自分だけがやたら白くて場違いなのが笑える。後で瑞樹に送ろう、と思ったところで首を振った。 (……もう、関係ないんだから。アイツに何か送ることなんて二度とないんだ)  そんなささいなことに、胸が痛む自分が嫌だった。勇気くんが、じっと俺を見た。 「ねえ、直さん」 「ん?」 「何かあったら海がいいよ! どこまでもデッカイから、すっとするし! それこそ、甘く見たらひどい目に合うし、塩なとこは誰にも負けないけどさ。それでもやっぱり最高だから!」 (……塩なとこは、誰にも負けない) 「まあ、海だもんね……」  真剣な顔で頷く勇気くんに、思わず吹きだした。
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