7. 決断

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7. 決断

 びしょ濡れでタクシーを捕まえ自宅に帰った今日子を、タマが出迎えた。 「ただいま」 「ご機嫌だな」  タマは人間の言葉を使った。 「ふふ、最初は田代ともめてご機嫌斜めだったのよ」  公園での出会いを思い出していた。  今日子はパウダールームで身体を拭き、顔を洗う。 「配役のことか?」 「あら、なんでもお見通しね」 「昼のワイドショーで、お前の映画の配役に、知らん女の名前が出ていた。蝶々みたいな名前だった」 「森乃揚羽?」 「そいつだ」  タマが答える。  森乃揚羽を使うことを誰かがリークして、既成事実を作ったのだ。犯人は田代だろうか? それとも森乃の事務所だろうか?   メイクを完全に落とした今日子は、タマの前に胡坐をかいて座り込む。まだ二十代の若さの今日子がそこにいた。 「年齢でレッテル貼られちゃどうしようもないわ」  今日子は溜息をつく。 「人魚の血で永遠の若さを手に入れたのにな」  タマが答える。 「演技力と、役に見合った美しさを認めて欲しいの。なぜ実力主義のこの世界で、年齢で差別されるの? 永遠にこの役を演じるために、私は不老不死の人生を選んだのよ」  今日子はタマに愚痴る。
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