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「週刊文鳥の記者?」
次の日、今日子はドラマ撮影のためテレビ局へ向かう車の中で、運転するマネージャーの市村に昨夜の出来事を告げた。
「海藤が来ることが漏れたのか?」
「違うわ。同じマンションに住んでいる政治家を張っていた記者が、海藤君を見かけて張り込まれたみたい」
今日子は説明する。
「映画化の噂が広がっていて、私が相手と見破られたのね。男のエキスを吸って若返る化け物ですって」
「誰が?」
「私がよ」
車内に笑い声が響く。
「だがとりあえず、海藤は共演OKになったんだろ?」
「ええ。もう大丈夫」
海藤が十六歳も年上の今日子との共演に難色を示していると聞いた今日子は、彼を自宅でのディナーに誘ったのだった。
大抵の若手俳優は、“おばさんキラー”といった色がつくのを嫌がり、最初は今日子との共演を渋る。しかし素の今日子と向き合うと、皆態度ががらりと変わるのだ。
「今回の映画化は絶対成功させたいの。先生のためにも」
やがて車はテレビ局に到着し、地下駐車場へと入って行った。
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