疑心暗鬼

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 否定する言葉はなかった。不自然な笑み。見たことのない表情。 その時、確信してしまった。あの手紙は本当なのだと。 「妊娠してるって本当なの」  もう一度訊くと、達也が長い溜息を吐いた。まるで自分が理不尽な目に遭っているような表情をする。 「……処置する時期に間に合わなかったんだ。産むためにギリギリまで隠してたみたいでね。どうしようもなかった」  あまりの残酷な台詞に、聞くのも怖くなる。妊娠6か月なら、すみれにプロポーズした頃関係していたことになる。   「すみれ。僕みたいな立場だと色々金目当てに悪い女が寄ってくることもある。もちろん僕が全面的に悪いのは認める。だけど事故みたいなことも時には起こるんだよ」  言葉ひとつひとつがそらぞらしいものに感じて、すみれは初めて達也に嫌悪感を抱いた。言葉が通じない。埋められない価値観の違いに背筋がひやりとする。  自分はこの人のことをなにも知らなかったのではないか──そんな気がしてくる。   「どうしてそんな大事なことを隠していられたの」 「もう済んだことだからだよ。彼女とはもう終わってる。もうなんの関係もない」  自分の子を妊娠している女性を無関係と言い切るのも引っかかる。人としてどうなのか。 「そんな……あなたの子でしょう」
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