甘えん坊のガッチリむちむち騎士

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 それでも騎士団第五師団の師団長だし、仕事柄、女性とかかわることも少々あるし、相手の女性だって、中には彼に好意を持つ者もいる。その少々を副官のロドニー・ヒューズにお任せしているらしいのだが、たまにそれをすり抜けてウィルフォードのもとに女性がやってくるらしい。 「そう、昨日は事務官の女がやってきた。ロドニーが担当している案件なのに、あいつが不在だとかなんだとか言って、俺の部屋にまでやって来やがった」 「なんのための受付よ」  彼らに会うためには、いくら事務官であっても受付を通らねばならない。受付も騎士団に所属する騎士が勤め、会う相手と理由をきちんと確認する。書類程度であれば、受付の騎士が預かり、そこから必要なところに配布する仕組みになっているはずなのだが。  どうやら、昨日の女はその受付をすり抜けてきてしまったようだ。  たまにそういうこともある。そのたびに受付での確認を強化するようにきつく言うのだが、どうやら相手のほうが何枚も上手で、金やら身体やらを使ってやってくる者もいるようだ。  女性恐怖症のウィルフォードは、職場でそうやって女性と接するたびに荒れる。帰ってきてから、私の目の届かないところで酒を飲み、暴れて寝る。  次の日はケロッとしているように見えて、こうやって甘えてくる。ウィルフォードにとって、私は母親的存在のようなもの。  だからといって、私が彼の母親の年代のわけではない。まだ二十代の裏若き乙女で、パンイチの男性を生で見たら「キャ」と恥じらうお年頃である。  だけど、今までの生活によってそんな恥じらいはすべて失われていた。 「はいはい。受付の人間にはもっと強く注意したほうがいいわね。場合によっては懲罰も考えたほうがいいわよ。どうせ金とかもらっているんでしょう?」  ようは賄賂だ。  よしよしとウィルフォードを宥める。彼は私の首元に埋めていた顔をやっとあげた。 「アイちゃん、ありがとう。シャワー浴びてくるわ」 「うん。ご飯の準備、しておくね」  私の言葉にウィルフォードは笑みを浮かべて、部屋から出ていった。せっかくなので、シーツの他に枕カバーも洗濯してしまおう。すべてに酒のにおいが染みついているような気がする。私の身体にも、雄のにおいがうつっているような感じがした。  彼の部屋を出て、洗濯物をまとめて籠にいれる。洗濯機なんて便利なものはないので、洗濯はすべて手洗いである。  私がこの世界にやって来たのは二年前。それまでは地球という惑星の日本という国にいた。ウィルフォードからはアイちゃんと呼ばれているが、本当の名は廣瀬(ひろせ)愛璃(あいり)。こちらの世界にやって来たときは二十歳だったが、二年もここで過ごしているので二十二歳になった。  私とウィルフォードの最初の出会いは、娼館と呼ばれる性的サービスを提供するお店である。  よくわからないうちにこちらの世界にやって来た私は、なぜか娼館で働くことになっていた。  家もない、家族もいない、金もない。となれば生活はできない。そんな私を拾ってくれたのが、娼館のオーナーなのだから仕方ない。  元の世界ではコミュ障だった私も、見知らぬ世界で生きていくために開き直るというもの。それに、娼館のオーナーが気さくな人だったのも、コミュ障の壁を少しだけ壊してくれた。  だけど娼館のオーナーは、私が女性だとは気づかなかったらしい。だから、清掃員として雇おうとしてくれていた。それは私が童顔で、今ではミディアムヘアとなった髪型も、当時はョートヘアにしていたからだと思う。
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