箱庭の救世主

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 私はギリッと歯を食いしばった。いつまで私は来る運命の日に怯えないといけないのだろう。8月31日──私の誕生日兼私の命日となる日。ぷつんと命の糸が切れて、また修復されて夏の部屋の椅子に座らせられる。  私は被検体でも人形遊びの人形でもない。一人の人間なのに。どうして私は同じ運命を生きないといけないのだろうか。  私が夏葉だからだろうか。夏という字が入っているから、私はいつまで経っても秋を迎えられないのだろうか。じゃあ私が真凛という名前だったら、普通の生活が送れたのだろうか。同じ夏の名前でも、夏という字が直接的に入っていないから大丈夫なのだろうか。  そうやって自分の名前さえも憎たらしく思ってくる。8度も同じ夏を迎えていると夏の暑さに加えて苛立ちさも相まって、何もかもがネガティブに思えた。全身が負の感情に支配されているみたいだ。  名前なんて、到底関係ないだろうに。  夏という空間から逃げ出せずに、一体何ヶ月が経ったのだろう。鍵が見当たらないまま、私は鎖に繋がれて延々と同じ空間に居続けている。  肌を刺すような暑さは、ヒリヒリと全身を刺激する。その刺激は段々と体の中にまで染み込んでいき、心に届いた。刹那、ポロリと何かが目から零れる。ポタポタと地面に小さな雫が落ちた。  こんな腐った人生、もう誰かが私を貶めようとして操っているようにしか感じられなかった。 「死にたくないよぉ……もう嫌だよぉ……怖いよぉ……」  その様子を観察するように、少女の部屋に小さく開いた点がジーッと動いた。
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