月と私

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「あっ、あの…。 ここって…あなた以外誰かいるんですか?」 「いいえ、私以外誰も住んでおりません。 王様と私だけでございます。」 「えっ⁈そうなの?  じゃあ…さっきの…。」 私はさっき見た写真について知りたかったけど、聞くのをやめた。 どうせ何を聞いても答えてくれないと 思ったからだ。 それにしても不気味な所だった。 広い廊下をしばらく進んで行くと大きな 扉がある場所に到着した。 そして、ご老人はその扉をゆっくりと開けたのだ。 「王様。  大変お待たせ致しました。  選ばれた人間を連れて参りました。」 ご老人は私の車椅子をおして、 広い王室へと入っていった。 とても広い王室だった。 広間の先に階段があり、その上に王様が 座っていた。 こちらからは王様の姿が確認できないぐらい 高いところに座っている。 「ゴート、ご苦労様。  さぁ、こちらへ来なさい。」 王様の声が響いた。 その声は…とても高い声だった。 まるで子供の様な可愛らしい声で 私はとても驚いていた。 「待ちくたびれたぞ。  さぁ、こちらへ進んで来るのだ。」 車椅子に乗せられたまま私はどんどん王様の方へと近づいていった。 そして、王様は座っていた椅子から立ち上がり 階段を降りてこちらへ歩いてくる。 私はその姿を見て更に驚いた。 「えっ⁈  こっ、こ、子供⁈」 「お前は失礼だな。  子供だからと言って馬鹿にしているのか?  私はこの国の王だぞ!」 「えっ?!  それも…あなた…人間⁈」 「あぁ、そうだ。  私は人間だ。  月に住む唯一の人間なのだ。」 私は驚き過ぎて、言葉を失っていた。 目の前に立っているその王様は 小学二、三年生ぐらいの小さな男の子だった。 (あれ?この子…。 さっきの写真の子だ…。) 私は訳が分からず、ただその子を見つめ ていた。  
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