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「主よ、さっさと見回りに行くぞ」
カインの低い声。
「カインと出会った時を思い出してたんだよ」
「ほぉ?」
カインは俺に”陽”の世界を見さす為に俺の目を奪って使用しているらしい。
「ちょっと衝撃的だったなぁって」
「あぁ、右手か。切り落とすと先に断りを入れられるのも嫌なものだろう」
それはそうだけど。カインにもびっくりだよ。浮いてるトカゲの骨って。
しかも俺の目、抉ってるし。
「どうでもいいが、行くぞ」
「はい、はい」
俺はそう言って振り返った。
いつものようにそこにはベッドに寝ている俺がいる。
”陽”の世界に入った際、体は”陰”の世界に残される。幽体離脱みたいなもんらしい。陽の世界に親和性があると体も入れるらしい。
親和性がないらしい俺は体を置いていく。
当たり前だけど、ベッドで寝ている俺の髪は黒い。
でも、今こうして立っている俺の髪の毛先は白い。毛先から頂点に向かってどんどん黒くなっているが、綺麗なもんじゃなくて、灰色みたいな…あんまり格好いいもんじゃない。
この髪は霊力のバロメーターみたいなもので白ければ白いほど、霊力があるということらしい。つまり、あまり霊力がないから俺の髪は灰色になるそうだ。
「じゃあ、行きますか」
「あぁ」
俺は”陽”の世界と繋がっているカイン目(要は俺の右目)に意識をずらす。
一滴の水が水溜まりの一部になるように、自然と”陽”の世界に溶け込む。
さっきまで俺の部屋にいた筈だけど、今は空き地のような所に立っている。
自分の持ち場に異常がないか見て回るだけの見回りって毎日しないとダメかねー?
しないと世界の均衡が崩れるとか父さん言ってたけど、本当かよ。
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