1.白虎

7/12
前へ
/64ページ
次へ
キリキリ…  霊力を込めた矢をライトと一緒に引ながら、奴らの胴体の下に潜る。  狙うは腹の一番膨らんでいるところ。 シュッ  矢の風を切る音がしたとほぼ同時に、他の土蜘蛛の糸に捕まってしまった。 「げぇっ」  なんというか、情けない。  足元では俺が射った矢のせいで倒れこんでいる土蜘蛛がいる。  今の状況をどうにかしたいが、身動きがとれない。 しかも、俺は霊力が少ないため、霊力を込められる矢はあと二本しかない。 プツン  足元から琴を弾き切るような音が聞こえた。 プツンップツンップツンッ…  これは糸が切れてく音なのか? プツンッ  確認のため音のする方を見ようとした時、音もなく数体の土蜘蛛達が俺目掛けて攻撃の手を伸ばしてきた。 やばいって…! …ゴツンッ 「っったぁ~!」  ちょっと、何?!なんで?!頭割れるって! 「早くあちらに走れ」  ビュンッと飛んで来た糸を愛用の鎌で切り落として、カインは土蜘蛛の群れから離れた場所を骨でできた指で示した。 「うん」  俺は走り出した。  きっとさっき、あの鎌で糸を切って助けてくれたんだよね。  少し申し訳ない気分になり振り返ると、カインが鎌で土蜘蛛の手を切り落としていた。ライトは俺の矢を握り、奴らの腹を切り裂いていた。  …もしかして、プツンと糸を切っていたのはライト?  …本当に俺は情けない。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加