恋が見える時

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クラスメイトの田上さんは、クラスで1番、目立っている。色の薄い髪と肌、華奢な手足が、チラリと見える度にドキリとする。薄い唇で、大きな口からは、比例するかのように大きな声が出る。特に笑い声が特徴的で、廊下にいても田上さんのものだと分かる、特徴的なリズムを持っている。最近、字も綺麗だと知った。少し丸くて、優しげな字だった。 「それは、アレだよ、恋ってやつだよー」 噂になるのは避けたくて、名前を伏せて話をすれば、友人たちはそう言った。そうか、これが、恋というものなのか。まるで、ヘレン・ケラーが「水」の概念を発見した時のように、僕は素直に感心した。 「っていうか、そんなやつ、クラスにいたか?」 「いやぁ? 湯浅とか色白だけど、アイツ……ほら、えっと……丸いじゃん?」 「口でかいっつったら丸山だけど、アイツ、陸上部だから、基本的に色黒だし」 「前田は書道で賞取ってたけど、そういうんじゃないし?」 「だよなー」 友人たちが、相手の検討を始めている。バレたら恥ずかしいし、だからといって、他の子と噂になるのも嫌だし、と思って口を挟めずにいれば、ひとりが僕の肩を叩いた。 「っていうか、告白、しないん?」 「こっ、告、告白!? や、ややっ、僕は、田上さんとどうこうなりたいわけじゃなくて……!」 「…………田上?」 うっかり滑った言葉を拾った友人たちが、思わず、といった調子で固まった。 「……や、まあ、色白だし」 「超インドアだからな」 「華奢だし」 「言い換えるとガリだけど……」 「笑い声と口がデカい」 「確かにデカかった……。笑いのツボがいつも謎だけど」 「字が綺麗で」 「綺麗……? アレ、めっちゃ丸文字じゃん……」 「でもさ、」 「でも」 友人たちが顔を見合わせている。その表情は困惑だった。 「田上、男じゃん?」 「お前も、男じゃん?」 「そうだよなぁー……好きなのは変わんないんだけどなー……」 「……開き直ったな……」 「……とりあえず、法律でも変えてみる?」 「や、高校生にどうこう出来る範疇、超えてますわー!」 「ってか先に田上の意思を尊重してやれよー」 「アハハハ」 「ハハハハ」 言って、僕は友人たちと笑った。 20231014 鳥鳴コヱス
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